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第一九章 最後の晩餐

       ― ルカ福音書 二二章(一節〜三八節) ―

はじめに

 三部で構成されているルカ福音書の第三部「エルサレムでの受難と復活」は、これまでに見てきたように、次の三つの区分に分けることができます。

1 神殿での活動と論争(一九・二八〜二一・三八)
2 受難物語(二二・一〜二三・四九)
3 復活告知(二三・五〇〜二四・五三)

 ユダヤ教の暦の一日は、日没から始まり次の日の日没までです。この第二区分の「受難物語」が扱うのは、「過越の小羊を屠るべき除酵祭の日」一日の出来事です。過越の食事がなされる夜から始まり、翌朝の裁判を経て十字架上の死に至る一日の出来事です。それはイエスの地上での生涯の最後の一日であり、イエスの地上での働きの総決算の日であり、救済史において最も重要な一日となる日です。この一日の出来事を、最後の晩餐、裁判、十字架上の死という三つの山場を中心に講解することになります。本章は、その一日の最初の重要な出来事である「最後の晩餐」を扱うことになります。
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