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あとがき

本書『福音と宗教』は、その上巻の「まえがき」に書きましたように、著者の年齢の制約から「主の許しがあれば」という条件つきで一両年後の下巻の刊行を予告していましたが、幸い主の憐れみもあって健康を支えられ、一年後の今年に下巻を刊行することができることとなりました。本論の原稿の大部分は上巻とほぼ同時期に出来上がっていたのですが、「福音と仏教」の関係についてはかなり手間取り、完成が遅れました。仏教については門外漢であり、まことに不十分なまとめになりましたが、「日本における福音の将来」を考える上で欠くことはできない主題であると考え、現在までの思いをまとめて「附論」として加えました。読者諸氏の叱正とご批判をお願いする次第です。

なお、本書上巻を刊行した二〇一六年の夏に、著者の新約聖書研究の基地になっていた「新約原典研究会」が終了しました。この研究会は発足以来ほぼ四〇年にわたって、月一回のペースでおもに著者の書斎で続けられてきました。これまでの著作の「あとがき」で繰り返し紹介し謝意を述べてきましたが、おそらくまとまった著作としては最後になる本書『福音と宗教』上下二巻を完了するにあたって、改めて久野晉良氏(大阪経済大学名誉教授、ギリシア哲学専攻)、私市元宏氏(甲南女子大学名誉教授、英文学・英米宗教史専攻)、水垣渉氏(京都大学名誉教授、基督教学担当)、田辺明子氏(プール学院大学名誉教授、キリスト教学専攻)の研究会員諸氏に深甚の感謝の意を表します。

著者の著作のような種類の著作集は多数の購入者によって可能になるものではありませんが、主イエス・キリストを愛する少数の同信の友による献金と祈り、何よりもその中に働いてくださっている神の助けにより、ここまで来ることができました。その中には校正という地味な仕事を引き受け、あるいは私財を捧げて出版を助けてくださった方もあります。保存版を刊行したときには多額の献金を送って、著作集の出版を可能にしていただきました。このような小さい器の小さい働きを通して、二五巻の著作集を世に遺すことを可能にしてくださった主イエス・キリストの父なる神に感謝を捧げます。