51 それぞれの生き方


 人はそれぞれ神から賜物をいただいているのですから、
 人によって生き方が違います。

        (コリントの信徒への手紙I 七章七節) 


 人生には様々な見方があります。自分の人生をどのように見るかは、その人の実際の生き方と人生の成り行きに大きな影響を及ぼします。ここに掲げた言葉は、使徒パウロが結婚問題について語った箇所に出てくる言葉ですが、福音の立場から見た人生の見方と生き方の特色を実によく示しています。

 まず、福音は人によって生き方が違うことを認めます。福音は、信じる者はみなこのような生き方をすべきである、と画一的な生き方を押しつけることはしません。人の生き方を決める素質や状況は様々です。それに従って生き方が違ってくるのは当然です。その違いを認めて、どのような生き方をしている者にも神の子としての同じ尊厳を認めるのが、福音の場の特色です。日本では、ややもすると自分と違う者を排除する傾向があります。これは福音によって克服しなければならない体質でしょう。

 次に、福音は生き方の違いが神の賜物によるものであることを知っています。それは、とりもなおさず、生き方そのもの、人生そのものが神の賜物であると自覚していることです。自分の人生は、自分の能力や努力の成果ではなく、それらすべてが資格のない自分に神が恵みとして与えてくださった賜物に他ならないことを知っています。ですから、自分の生き方を誇ったり、他人の生き方を批判し軽蔑したり、妬んだりすることはありません。多くの賜物を与えられている人は、多く仕えるために与えられているのです。自分に与えられている賜物の量りに従って人に仕えていけばよいのですから、焦ることもありません。だいたい、自分が存在していること自体が賜物です。賜物を与えてくださった神に感謝しつつ、その賜物に従って、自分の分に応じた生き方をすればよいのです。そこに平安があります。

(天旅 1994年3号)



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