「市川喜一著作集保存版」の刊行   2015年9月19日 土曜日



市川喜一先生の新約聖書講解の完結の意義と思うところについては、一昨年の5月に述べた。(「推薦の辞」の最後の「市川喜一氏新約聖書講解の完結を喜ぶ」はその要約)

市川先生の講解に描かれた青年イエスの限りなく魅力的な姿や、福音のいきいきとした生命は、たとえ今のところは現代日本の喧騒の中にかき消されているように見えても、かならずや人々の心に届き、そしていずれかの時代にはその巨きな意義に相応しい広がりと深さを持って、日本人が生きる励ましになっていくに違いない。自分には今の世間に広く訴えかける力はないものの、なんとかその時代までこのテキストが伝わるようにしたいものだ。と、そう心中に思い続けてきたが、どうやら思いを同じくし、しかもずっと行動力のある方々がいて下さったようで、宗教とは別のお仕事をお持ちの、弁護士さんとか医学部の先生とかが幹事になられて、今月、著作集の保存版が刊行された。

テキストは再校正と改訂を経た第二版で、写真のような装幀、活字もくっきりと目に入り、読みやすい。

市川先生は、ローマ書講解のあとがきに、「歴史を画した先人の偉大な作品には較べるべくもありませんが、二十世紀後半の日本でキリストにあって歩んだ一人の証言を、神の救済史という大路の路傍に、一つの小石としてそっと置いておくものです」と書かれた。

大路の路傍のこの小石は、脇道の真ん中に置かれた大石よりも遥かに大きい。大きいだけに、近くで見る人の目には入りにくいが、遠くから見ればその大きさはきっと明らかになっていくはずと思う。

刊行会の方々の「後世に残さねば」という願いが実現することを切に願います。

  ( 主筆市川からのコメント ― この匿名の著者は「感想」と題するブログのページをインターネット上に出しておられます。著者は聖書にも仏教にも造詣が深く、宗教問題についての観察は正鵠を射ており、鋭さを感じます。上記の感想は、そのブログの「市川喜一先生」の最初に置かれている感想文です。この「感想」というブログの一読をお勧めします。)
 


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