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心に残る1冊の本、それは「聖書」
尼崎  畑野 栄一

「医学と福音」誌編集顧問の原岡先生から、私の93歳と云うこれまでの長い人生の中で出会った「心に残る1冊の本」のことを書いて下さいと云うご依頼が参りました。その時その時に素晴らしいと思った本は沢山ありますが、すべてその時々の私の山場、谷間での状況に応じた感懐によるので、老齢になった現在での選択を考えると、いずれも少し物足りません。現在の弱体化しているキリスト教界特に信徒諸氏のパッション不足を考えると、この際「1冊の本」の名を挙げるとすれば、当然福音を記載した、『聖書』にならざるを得ないと感じています。

 ところで昨秋ある主日の夕方、息子の研太郎と「神の国」論議となりました。双方の視点が食い違っていますので、大した争論にはならなかったのですが、その時、イエス様の告知された「神の国」到来と云う恩恵の伝達、次いで12使徒の宣教活動とパウロの福音活動、更に福音記者たちの「福音書」伝道、そしてヨハネの「永遠のいのち」の述懐などの、私の現在までの信仰の集約的解釈、と云いますか、いや「信仰・希望・愛」をまとめてみたいと云う気持ちを起しました。

でもこのような大きな問題に取り掛かれるような力は私にはありません。幸い74歳からキリスト福音誌「天旅」主筆市川喜一師から「天旅」購読によって色々と導いて頂いておりました。師は教会の外にあって出版さている福音誌「天旅」の主筆、私は聖公会の一信徒に過ぎませんが、エキュメニズム的(簡単に言えば、教会一致がエクレシアの本質的在り方と考える考え方)にも理解を同じくしていると思われるし(キ医連もそうですね)、師のご回心、信仰心の展開の証しも、敬愛をもって理解してついて行ける程、私を惹きつけるものがあることから、師のご著書によって聖書の理解を深めさせていただこうと考えました。21冊に達するご著書のすべてを読破して理解し、纏めることは至難です。私の目的に沿ったご著作名だけでも、次に挙げますと、「神の信に生きる」・「マルコ福音書講解TとU」・「パウロによるキリストの福音書TとU」・「福音の史的展開TとU」最小限7冊の本を、私の「心に残る1冊の本」=「聖書」の内容を語る本としてご紹介したいのです。何故かと云いますと、マルコ福音書では神の国の恩寵を、そして福音書伝道の福音をペテロの口伝伝承(マルコ福音書)によって学び、以後ユダヤ人伝道から異邦人伝道に移って行かざるを得なかった福音活動の根幹を、以上のご著書によって新約聖書から探りたいと考えました。そして今年2014年5月から《「信仰・希望・愛」の展開の物語》と云う題で、芦屋聖マルコ教会ホームページへの投稿を、牧師から許されました。この投稿は全部で七万字を超えますので、ホームページに八〜十回(未定)の連載予定になります。終わるのは多分、今年の12月か、来年の1月になるでしょう。ご興味のある方は、ホームページをご参照ください。

 簡単に内容をご紹介しますと、キリスト福音誌「天旅」二〇〇五年三号巻頭言の《ゼロの場に生きる》の市川師の発言「今私たちがキリストにあって得ている救いの祝福――それは信仰と愛と希望です――は、私たちの資格と価値に応じて与えられたのではありません。全く働きも資格もない者に与えられた絶対無条件の恩恵の賜物です」に始まって、
《信仰》――「神の義」「主キリストにあって」「ピステイス・クリストウ」=「キリストの信仰」(キリストを対象にした信仰と云うのみではなく)。と云う項目を掘り下げ。以下、
《愛の讃歌》(Tコリント13章) また、
《キリストの相の二重性》(現在私たちが見ている、『十字架のキリスト』の相と『復活のキリスト』の相の二重写し)。説明すれば、(私たちはキリストの十字架を見ている時、同時に主の復活を見ているのであり、「復活」を見ると同時にその裏に主の十字架を認識しているということ)。
更に《私たちがイエスに合わせられて生きているのだと云う、聖霊の働きの強調》・・・(聖霊を受けていないキリスト者はいない。裏返せば、聖霊の働きを受け「永遠のいのち」によって現在を生きる者が、キリストに属する者である)。
と云う、以上述べた諸項目について知恵を与えられました。

 私はこの市川師の聖霊論に深く共鳴しています。現在の教会に属する者たちが、最も必要としているのが、主の復活後の聖霊体験だと思っています。
 こうしたみ言葉の極意、或いは奥義と申してもよいような深い意味を今回受け取りました。殊に共観福音書、ローマ人への手紙、コリント人への第一の手紙、特に12章、13章、14章に記載された信じる者への賜物(カリスマ)とエクレシア創生との関係、を興味深く読ませて頂きました。更に、ヨハネ福音書・手紙によって、「永遠のいのちと愛」を、又現在一番怪しくなっている信徒たちの「希望」を、復活信仰と、キリストの御霊と私たちとの共生信仰によって銘記させ、わたしのいのちを燃え立たせて頂いたことを感謝しています。

 今回《聖書》によって与えられた内容の概要が、このホームページを読んで下さると分かるように、下記にH・Pの項目を列挙しておきます。

芦屋聖マルコ教会ホームページ
  「信仰・希望・愛」の展開の物語 信徒の研修の為に バルナバ畑野栄一 
  イエスのお言葉「神の国は近づいた」
  イエスの「神の国宣教」から、十二使徒の「福音伝道」へ
  パウロの福音活動と福音記者たちの「福音書伝道」、 附、福音と福音書
  パウロの福音伝道の内容の抜粋(T)
  パウロの福音伝道の内容の抜粋(U)
  「永遠のいのち」
  《愛なる神》 溢れる愛  満たす愛  沁み込む愛
  「信仰と愛」に結びついた「希望」

註  P・Cで市川喜一著作集を開きますと中に「天旅」ホームページがあり、
   市川喜一師の諸著作、その他の説明があります。



編集者からのコメント
 寄稿者の畑野栄一兄は、日本聖公会・芦屋聖マルコ教会に所属の方です。現在94歳のご高齢ですが、長年小児科医として働かれた後、ここ十年あまり「希望と勇気」やその他の個人福音証言誌を出して、キリストの福音を多くの読者に語り続けてこられました。1995年から「天旅」誌友としての交わりをいただくようになり、拙著を用いて読書会を進めていただくなど、主にある同志として親しくしていただいています。ご家族の寿子夫人は日曜学校や死刑囚伝道などに、ご長男研太郎氏は海外医療伝道派遣医師としてバングラデシュで活躍されるなど、御名のために献身されているご一家です。この度、「医学と福音」誌からの寄稿依頼に応えて投稿されました証言の転載をお願いし、このホームページにアップロードさせていただきました。  (2014年12月)

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